【読書日記】 日本人としてこれだけは知っておきたいこと (中西輝政)

国際政治学を専門とする学者による、日本のアイデンティティに関する啓蒙書。

全体的なトーンは、極端なまでに国粋的。いわゆる「戦後教育」とバブル崩壊以後の日本人の自信のなさに危機感を覚えたのが本書の著述動機なので、それはある意味当然。

内容を自分なりに述べると以下の通り。
①日本の精神的な強さを挫くというGHQの意図もあり、第2次大戦以前の日本を全否定するような教育が行われてきたが、これは正しくないし、それを是として受け入れてしまった当時の世代がその実情を後世代に伝えていないことも問題。
②日本側でも、「敗戦」を「終戦」、「占領軍」を「進駐軍」と言い換えるなど、戦前を否定するような動きが見られた。
③戦後は、社会主義の実験場として、国家観をもたずに高度成長に走っていった。
④これらについては、放っておくと日本の脅威が残るという米国の大戦略によるところが大きい。
⑤また、最近発表されつつある資料によれば、開戦に至る過程では米国側、日本側双方にソビエト共産党のシンパがかなりの規模で入り込んでいた可能性があり、開戦自体も日本側の戦略ミスだけでなく大きな謀略的意図に乗らされてしまったと見られる。
⑥にもかかわらず、日本は周囲に対して反省ばかりをしており、マスコミも含めて、「日本らしさ(後述)」に対して非常に敏感に否定する傾向がある。
⑦世界の論調というのは60年周期で変わることが多く、その意味で「日本脅威論」も一服しても良い時期。アメリカも「政教分離」や「戦争放棄」といった終戦時に押し付けたアイディアの修正を行いつつあるのだから、日本もその意識を変えていかねばならない。
⑧その中心におかれるべきなのは、皇室であり、神道。その観点から言うと、今の皇室の扱いや靖国参拝に対する神経質すぎる対応は、嘆かわしい。
⑨今こそ、皆が日本のアイデンティティに自信を持ち、行動すべき時。

納得できるところもあるが、全体にはエキセントリック過ぎ。材料もかなり恣意的に判断しているきらいが強く、説得力よりも反発の方が大きい。例えば、「神道」は明治以後に再構成されたものであり、それまでの神仏混淆とは異なるし、その意味では「靖国」を正当化するのはちょっと違う。

自己の思いや主張を説得したいのであれば、もっときちんとした材料を出していくことが必要だろう。開戦に至る経緯など、なるほどと思わせる解説も多いのに、ちょっと残念だった。

著名な大学教授に対して僭越至極ではあるが。

(PHP新書)




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0