【読書日記】 決戦の蒼空へ (渡辺洋二)

太平洋戦争時の航空戦史を中心に活躍するジャーナリストによる短編集。毎年夏に文春文庫で作品を発表してきているが、今回は陸海軍の戦闘機に関する物語を集めている。

機体で言うと、海軍では零戦、雷電、月光、紫電/紫電改、震電。陸軍では隼、鍾馗、飛燕、疾風、屠龍、五式戦など。14の挿話が収められているが、どれも機体というよりは人が主役。太平洋戦争初期の威勢のよい時期ではなく、後半戦の苦闘が物語の中心であり、厳しい中で若者達がどのように闘い、散って行ったか、生き残った人々がどんな思いで戦後の成長のなかで生きてきたのか、などが語られる。

皆が皆美しい生き方をしたわけでなく、指揮官でありながら敵前逃亡に近い行動をとった人もいる。そんなことも含めて当時の戦地での様子が伝わってくるような記録になっている。

あとがきで、「夏の文春文庫の最後として戦闘機だけをまとめてみた」という記述があり、本書がこのシリーズの最後になる模様。日本の敗戦から65年が経ち、直接取材のできる関係者が激減したため、新たな作品が書けなくなってきたためだろうか。著者なりの評論を中心にした作品を書いても良いのではないかとも思うが、事実をして語らしめるという著者のスタイルからは、それを良しとされないのかもしれない。

団塊世代の年金受取が始まるという今年は、戦争の記憶を語る人々が本当にいなくなっていく年でもある。

(文春文庫)

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